【適当は厳禁】決算月はいつがいい?失敗する人の共通点5選

2023.07.28

決算月はいつにすればいい?失敗したくない!
決算月はどうやって決めているの?
税金面で損するのは避けたい
 
こんな悩みにお答えします。
 
いざ自分の会社の決算月を決めるとなれば、悩む人も多いかと思います。
法人にとって決算月は自由に設定できる一方で、戦略的に考える必要があります。
 
「まわりが3月決算にしているから、うちも3月決算にしようかな」
このような理由で決算月を決めてしまうと後悔しかねません。
 
本記事では、
決算月の設定を失敗する人の共通点5選
決算月の変更の仕方
決算前に効果的な節税対策3選
 
をお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
 
後半では決算前に効果的な節税対策も解説しますので、本記事を最後まで読んで会社にとってベストな選択肢を選んでくださいね。
 
 

【適当は厳禁】決算月はいつがいい?失敗する人の共通点5選

決算月とは事業年度の最終月のことを指す、経営戦略の重要な要素です。
 
決算では決算書を作成し、その後は株主総会にて株主へ報告し、税金の納付を行います。
法人と個人事業主での決算の違いは以下のとおりで、共通して会計期間は1年を越えてはいけません。
 
【法人の場合】
決算月はいつでも設定でき、月末じゃなくても問題なし
 (7/10〜7/9のように月の途中で設定できる)
決算は半年決算でも問題なし
決算月から2ヶ月以内に法人税や消費税を納付する必要がある
 (末日が休日であれば、その翌営業日が期限)
 

【個人事業主の場合】
決算月は12月と決まっている
翌年の2月16日〜3月15日に確定申告を行う
 

このように個人事業主は決算月を自由に決められません。
法人の場合は自由だからこそ、適当に決めると思わぬ事態を招きかねませんので、以下では失敗する人に共通するポイントを5つご紹介します。
 

消費税の免税期間を考慮しない

免税事業者として消費税が免除される期間を長くしましょう。
消費税の納税額に大きく影響するからです。
 
新規で事業をはじめた場合、課税売上高が1,000万円を超えるなど一定の条件を満たさない限り、最初の2年間は基準期間がないため免税事業者となります。
ポイントは消費税の免税事業者である期間は年単位ではなく事業年度単位という点です。
 
たとえば、
 
10月に会社を設立し、翌年3月を決算月にした場合
→初年度の免税事業者である期間は5ヶ月
10月に会社を設立し、翌年9月を決算月にした場合
→初年度の免税事業者である期間は12ヶ月
 
比較すると②の方が消費税がかからない期間が長いのは明白ですよね。
このように、24ヶ月まるまるを使ったほうが節税面では効果的です。
 
※事前にシュミレーションを行い、初年度の事業年度の開始の日から6カ月間の課税売上高・給与支払額が共に1,000万円を超える場合には、短期事業年度(事業年度が7か月以下)についても考慮に入れる必要があります。
 
会社設立1期目はできるだけ免税事業者でいられる期間を長く設定することを検討しましょう。
 
ただし、2023年10月よりはじまるインボイス制度にて課税事業者になる場合は、設立当初から課税事業者の扱いになります。
 

会社の儲かる月を決算月にしてしまう

会社にとって収益が多くなる月は決算月から外し、事業年度の期首に設定しましょう。
節税対策や事業投資、設備投資などの計画を立てやすいからです。
 
たとえば、期首に多くの収益が発生したり、場合によっては計画した売上を下回ったりしても、そのタイミングが期首であれば決算まで残りの11ヶ月であらゆる対策を考えられます。
 
主な取引先の繁忙期などもチェックしておきましょう。
取引先が予算を消化したい月と会社の決算月が被さると、売上が集中する可能性があるからです。
 
決算月は大きな収益が上がりにくい月を選び、不測の事態が起きても対処できるようにしましょう。
 

会社の繁忙期に合わせてしまう

決算月は会社の忙しい時期と被らないようにしましょう。
在庫の棚卸しなど通常業務に加えて、決算業務があると大変だからです。
 
社員への負担が大きくなり、ヒューマンエラーなどにつながる可能性もあり、業務効率を大きく下げてしまいます。
 
決算月と会社の繁忙期はずらして設定しましょう。
 

税金などの支払い時期を考慮しないで決算月を決める

決算月から2ヶ月後を、会社の資金に余裕がある月にしましょう。
納税する月に対して、多くの支出が一時期に集中すると資金繰りが大変になるからです。
 
たとえば、
ボーナスなど賞与の支払い時期
仕入れなど経費の支払いが多い時期
 
など、決算月から2ヶ月後の法人税・消費税の納税するタイミングは逆算し、うまくずらして設定しましょう。
 
資金が増えたり、資金に余裕がある月をあらかじめ選ぶように心がけましょう。
 

税理士の繁忙期を考慮しない

我々からこんな話をするのも心苦しいですが、税理士が忙しくなる時期を意図的に外すこともオススメです。
 
税理士の忙しい時期と被ってしまうと、下記のようなリスクが考えられます。
 
余裕をもって決算業務に向き合ってもらえない
手抜きをされる
そもそも忙しいという理由で断られる
 
多くの企業は3月末決算ですので、2ヶ月後までの4〜5月は税理士にとって繁忙期になります。
3月末に次いで多い9月決算、12月決算も同様です。
 
また、個人事業主が確定申告する時期と被らないかもチェックポイントです。
確定申告時期にあたる2月〜3月も税理士がとても忙しくなる時期です。
 
なるべく税理士が忙しくない時期を決算月にして、スムーズな決算業務ができるようにしましょう。
 
 

決算月を3月・9月・12月にする会社が多い理由

法人にとって決算月は自由に決められますので、下記のように会社によってさまざまです。
 

引用:国税庁『決算期別の普通法人数』
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/hojin2021/pdf/04_hojinsu.pdf/
 
特に決算月として多い3月、9月、12月について、その設定理由を以下で深掘りします。
 

【3月に多い理由】会社を取り巻く環境に合わせているから

多くの会社が3月に決算月を設定している理由は、
国や地方自治体の会計年度に合わせている
法改正に合わせている
総会屋への対策
 
などが考えられます。
 
1点目は、国や地方自治体など官公庁から仕事を受けることが多い大企業によくある特徴です。
 
官公庁の事業年度は4月〜3月と法律で決まっており、それに基づき事業計画が立てられます。
その事業計画に基づいて民間企業へ発注がかけられることを踏まえて、企業の側も決算月を3月に設定しているわけですね。
 
2点目の法改正は一般的に4月1日より施行されますので、事業年度と合わせるために決算月を3月に設定するという理由です。
 
決算月を3月にすれば法改正と連動させて会計処理を変更でき、業務の煩雑化を避けられるメリットがあります。
 
3点目は過去の名残とも考えられますが、株主総会を荒らす総会屋の対策として、各会社が総会屋が株主総会を回りきれないようにする目的のもと足並みを揃えて3月決算にした経緯があります。
 
ちなみに総会屋とは、株主としての権利を濫用して不当な利益を得ようとする者を指します。
 

【9月に多い理由】比較的落ち着いた時期だから

1年間を通じてもっとも落ち着いて決算業務を行える時期だからです。
 
もちろんすべての会社に当てはまるわけではありませんが、3月決算だと4月以降は人事異動や新入社員の入社などで慌ただしくなりますし、12月決算だと業界によっては年末年始の繁忙期と重なりますので、なかなか落ち着いて決算業務に向き合えません。
 
このように決算月から2ヶ月先の忙しさを事前予測して、決算月を決めるのは得策と言えます。
 

【12月に多い理由】海外の企業に合わせているから

海外企業との取引が多い会社は、12月決算にしていることが多いです。
 
海外では12月を決算月にする会社が多いからです。
 
取引先の事業年度に合わせた方が、事業計画などが立てやすく、足並みを揃えやすいことが考えられます。
 
また、個人事業主から会社設立に至った人は、そのまま12月を決算月にしていることも珍しくありません。
 
 

決算月は後から変更できる

決算月は一度決めてしまっても、後から変更できます。
 
少しでも変更を検討しているならば、会社が大きくなって小回りが効かなくなる前に行動に移しましょう。
 
また、消費税の免税期間を終えた後、それでも不便に感じるようであれば変更を検討するものいいですね。
 
以下では決算月を変更する手続きついて説明します。
 

株主総会で特別決議をする

決算月を変えるには定款の変更が必要ですので、株主総会で特別決議をしましょう。
 
特別決議とは議案を可決するにあたり、議決権の半数を保有する株主の出席と、出席した株主の議決権の2/3以上を必要とする決議方法です。
 
わざわざ登記を変更する必要はありません。
 
なお、合同会社の場合は全社員の同意が基本です。
 

税務異動届を出す

株主総会で決算月を変更する承認が得られた後は、『税務異動届』を提出します。
 
提出先は下記のとおりです。
 
所轄税務署
都道府県民税事務所
市区町村の役所
 

税務署へ提出する書類は、
株主総会で決議された議事録
決算月の変更の旨を記した異動届出書
 
融資を受けている銀行など、金融機関へも届出しておきましょう。
 
 

【効果的】決算前に対策できる節税ポイント3選

決算月までに将来的に必要なものへ投資すれば経費となり、翌期に納める税金を減らせます。
 
3つの節税ポイントは、
 
・人材の採用費
・宣伝広告費
・交際費
 
いずれも投資の前倒しという視点が大切です。
 
経費を増やすためだけの無駄遣いにならないようにご注意ください。
 

人材の採用費

決算月までに将来の人材を確保するための採用費に支出しましょう。
 
人材確保につながる投資はいずれ必要な経費だからです。
 
具体的には下記の費用です。
 
・採用媒体への出稿
・会社説明会の実施
 
これらに投資して採用活動を前倒しで実施すれば、早期に費用化しつつ、かしこく翌期の節税対策ができます。
 

広告宣伝費

自社の商品・サービスの販促や、認知を拡大させるための費用に支出しましょう。
 
これらも翌期以降の会社の活動にとって必要であれば、前倒しでできる施策だからです。
 
具体的には下記の費用です。
 
・インターネットへの広告費
・情報誌への掲載依頼
・DMの発送数を増やす
・ホームページのリニューアル費
・販売用ページの作成費
 
会社にとって必要であることが大前提ですが、来季の売り上げにつながる施策として有効ならば、費用を前倒しで払っておくのは節税にも効果的な方法です。
 

交際費

来期の仕事につながるような接待に費用を支出するのも良いでしょう。
 
交際費も同様に、翌期も取引先の接待に交際費を使うのであれば、決算月に対して前倒しできる施策だからです。
 
あくまでも将来的なキャッシュフローの改善や、売上アップにつながることを目的に投資しましょう。
 
 

まとめ

今回は決算月の決め方や変更方法について解説し、後半では決算前にできる節税対策もご紹介しました。
 
失敗する人に共通するポイントのおさらいですが、
 
消費税の免税期間を考慮しない
会社の儲かる月を決算月にしてしまう
会社の繁忙期に合わせてしまう
税金などの支払い時期を考慮しないで決算月を決める
税理士の繁忙期を考慮しない
 
上記のように、さまざまな視点で決算月は決める必要があります。
安易に設定してしまうと税金の支払いが多くなったり、会社の資金繰りが悪化するなど、会社経営に支障をきたしかねません。
 
会社の状況を踏まえて税理士などの専門家に意見を求めるのも有効です。
 
会社にとってお金の出入りする時期を見定め、計画的に決算月を決めましょう。
 
 
 
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監修者

税理士 篠塚啓三
税理士 篠塚啓三
1975年生まれ 埼玉県所沢市出身
早稲田大学商学部卒業
関東信越税理士会、所沢税理士会に所属大学卒業後、一般企業を経て
平成15年4月 シン中央会計 入社
平成18年12月 税理士登録 登録番号106985
平成29年11年 税理士法人シン中央会計 代表に就任主に創業間もないスタートアップの顧客向けに、クラウド会計の導入やバックオフィスの合理化、経営数値の見える化や事業計画作成、金融機関からの資金調達など、幅広い支援を行っている。

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