【徹底解説】会社(法人)登記の必要性とは?   【節税と信頼向上】

2023.05.18

・会社登記はどうして必要なの?
・会社登記するメリット・デメリットは?
・会社登記の手続きや費用が知りたい
 
こんな悩みにお答えします。
 
結論、会社を作るには登記を避けては通れません。
個人事業主として所得が多くなると、会社設立を検討することもあるでしょう。
 
とはいえ、会社登記と聞くと手続きが大変そうですよね。
 
ですが、実はその壁を乗り越えた先には多くのメリットも存在します。
本記事では法人化を検討する際のポイントを解説しつつ、登記申請に関する
具体的手順をお伝えします。
 
今後を見据えて会社設立を考えているならば、ぜひ参考にしてください。
 

会社登記の必要性とは

会社として存在するためには登記が必要です。
 
会社登記(法人登記)とは、法人が取引するときに必要な情報を開示するために法務局に登録する制度です。
 
具体的には、会社として登記完了すると法務局より「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得できます。
これにより法人であることを外部に対して簡単に証明できるようになります。
 
では、どのようなときに証明する必要があるのでしょうか。
 

登記事項証明書の確認が求められるケース

主に次の2点で登記事項証明書が求められます。
 
①融資や増資などの資金を調達するとき
②許認可や補助金の申請をするとき
 
さすがに信用できない会社にお金は出せないものです。
 
・事業をきちんと行っているか
・会社としての実態に問題はないか
・申請基準を満たしているか
 
これらを確認し、信用できる会社かどうかを判断します。
 
ちなみに、法人成りすれば会社の代表者個人と法人とは別人格の扱いになります。
たとえば、銀行で融資を受ける場合は、個人名義ではなく法人名義で契約します。
 

会社登記のメリット・デメリット

初期費用と手間のハードルはあるものの、個人事業主にとって信頼性が上がり節税効果もある会社登記にはメリットがあります。
 
メリット・デメリットを順番に解説します。
 

会社登記するメリット(信用性の向上と節税)

・信用性が増す
 
 会社を登記すると登記事項証明書は誰でも取得でき、基本的な情報は一般公開されます。
 
 つまり、法人として取引上の信頼性を担保できますので、信用度は個人事業主よりも高くなります。
 
 前項で説明しました資金調達や補助金申請などで信用を獲得しやすくなります。
 
・節税できる
 
 個人事業主は所得税が最大45%ですが、法人税は最大約23%程度です。
 
 控除額を踏まえると単純比較はできませんが、例えば所得金額が900万円を超える場合、個人事業主の所得税率は33%(※1)以上かかりますが、法人だと一律23%(※2)程度です。
 
(※1.所得税の他、住民税10%もかかるため、実効税率は約43%です)
(※2.法人税以外の税金も含めた実効税率は会社規模にもよりますが、約33%前後です)
 
 他にも、法人の場合は役員給与を経費計上できるなど、税制面で優遇されます。
 

会社登記するデメリット(費用と手間)

・費用がかかる
 
会社登記するのに必要な各種手続きには何かとお金がかかります。
 
例えば、登録免許税や定款認証料など。
 
会社設立後は社会保険への加入義務もありますので、保険料の負担もお忘れなく。
 

・手間がかかる
 
慣れない登記申請手続きには手間がかかるでしょう。
 
ですので、司法書士に依頼する人が多いのも事実。
 
とはいえ法務局の担当者も親身に相談に乗ってくれますので、トライする価値はあります。
 

「商業登記」「法人登記」「会社登記」は定義が異なる

「商業登記」「法人登記」「会社登記」は定義や意味合いが異なりますが、同じ意味で使われるケースが多いです。
 
これらは商法や会社法に定められた会社等の一定事項を公示するための制度を指します。
 
では、似たようなワードの違いを押さえましょう。
 

会社登記・法人登記は商業登記の一部と考えて問題なし

商業登記=会社登記と考えて問題ありません。
 
というのも、設立した会社を登記するという意味で、商業登記ではなく会社登記と呼ばれることがあるからです。
 
そして、商業登記(会社登記)と法人登記の違いは営利目的かどうかです。
 
・商業登記(会社登記):営利目的の法人に必要な登記
・法人登記:非営利目的の法人に必要な登記
 
ですので、登記における対象は下記のとおり。
 
・商業登記(会社登記)の対象:株式会社、合同会社、合名会社、合資会社
・法人登記の対象:会社以外の一般社団法人、一般財団法人、NPO法人、社会福祉法人、宗教法人、学校法人
 
このように登記する対象が異なりますが、法人登記も会社登記も商業登記の一部として考えて差し支えありません。
 

商号登記との違い

商号登記との違いについても触れておきます。
 
商号登記とは、屋号を法務局に届け出することで一般公開できる制度です。
 
個人事業主が商号登記するメリット・デメリットは以下のとおり。
 
【メリット】
・登記簿謄本が作られるので、社会的な信用度を高められる
・公示されるので、他の会社と商号が重複するリスクを回避できる

 
【デメリット】
・商号登記申請書と印鑑証明書が必要となり手間がかかる
・登録免許税として30,000円が費用として必要

 
会社登記とは異なりますが、必要であれば申請を検討しましょう。
 

会社登記するまでの流れ【5STEPで解説】

複雑そうな会社登記ですが、主に次の5STEPで完結します。
 
【STEP1】会社概要を決める
【STEP2】印鑑を作成・認証する
【STEP3】定款を作成・認証する
【STEP4】資本金(出資金)を払込む
【STEP5】法務局で登記申請する

 
順番に解説します。
 

【STEP1】会社概要を決める

まずは必要事項を決めます。
 
【主に決めること】
・商号
・事業目的
・事業年度
・本店所在地
・法人の設立形態
・株式会社の設立方法
・役員
・資本金 など

 
なお、商号については類似調査をしておきましょう。
他者と同じ名称や類似の名称が使われていないか確認するためです。
 
ちなみに、法人の設立形態は発起設立と募集設立の2種類です。
発行株式の全部を発行人が引き受けるかどうかに違いがあります。
一般的には発起設立が多いですが、ご自身の会社設立にあった方法を選びましょう。
 

【STEP2】印鑑を作成・認証する

法人設立時に印鑑を実印で登録します。
印鑑は主に3種類。目的別に紹介します。
 
・代表者印(会社実印)
 会社登記時や契約締結時に使い、一般的には丸印で作られます
 
・銀行印
 銀行口座の開設時などに必要です
 
・角印(社印)
 請求書や領収書に押印するときに使います
 

【STEP3】定款を作成・認証する

【STEP1】で決めた内容に基づいて定款を作成します。
 
定款とは、会社の基本的なルールを示したもので、3つの記載事項があります。
 
・絶対的記載事項:必ず記載する必要ある
・相対的記載事項:一定の定めを設ける場合
・任意的記載事項:自主的に記載する
 
定款を作ったあとは、本社所在地を管轄する公証役場で認証を受けます。
過不足や法律違反がないかをチェックする必要があるからです。
ちなみに、合同会社の場合は認証不要です。
 

【STEP4】資本金を払込む

ここでの手順は2つです。
 
①預金口座へ資本金を払い込む
 
発起人の預金口座へ資本金を払い込みましょう。
 
大事なことは、振り込んだ形跡を残すこと。
払込証明書で必要になりますので、誰がいくら払い込んだのかがわかるようにしましょう。
 
②払込証明書の作成
 
払い込みを証する書面を作ります。
 
通帳履歴など入金履歴のわかる部分の写しを用意しましょう。
作成するときは各ページに割印をしておきましょう。
 

【STEP5】法務局で登記申請する

法務局での登記申請が完了すれば、晴れて法人設立です。
しかし、登記申請に必要な書類は多く複雑なので、さらに深掘りして解説します。
 

必要書類の準備

下記の必要書類をそろえましょう。
 
・設立登記申請書
書式は法務局のHPからダウンロードできます
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html
 
・定款
 
・資本金の払込証明書
 
・発起人の決定書(発起人議事録)
会社設立に必要な基本事項を書面にまとめたものを指します
 
【発起人が決定する項目例】
 ・商号
 ・会社の目的
 ・設立時の発行株式に関する情報
 ・設立時の役員に関する情報
 ・具体的な本店所在地

 
・就任承諾書
役員は会社から委任を受けて就任するので、それを承諾したことを立証する書面です
 
・印鑑証明書
定款の認証を受けたときと同じものを用意しましょう
なお、発行から3か月以内のものが必要です
 
・印鑑届書
法人の実印を登録するための必要書類です
 
記入漏れ、誤字・脱時、押印忘れなどには気をつけましょう。
 

登記申請書の作成・提出

本店所在地を管轄する法務局へ提出します。
 
【3つの申請方法】
・法務局への直接提出する
・オンラインで申請する
・郵送で申請する 

 
なお、登記申請を完了した日が法人設立日となります。
 
郵送での申請は到着までに時間がかかることをお忘れなく。
記念日などに設立日を合わしたい方は、逆算して提出しましょう。
 

登記完了

登記官からのチェックに問題がなければ、1〜2週間程度で完了します。
会社設立後の各種手続きで必要になりますので、「登記事項証明書(登記簿謄本)」や「印鑑登録証明書」を複数枚取得しておきましょう。
 
ちなみに、登記事項証明書と登記謄本の違いはコンピュータで処理されているかどうかですので、内容に差はありません。
 

会社登記にかかる費用

法人など会社自体は資本金1円から設立できますが、実際は定款の認証時などに諸費用がかかります。
 
【会社登記にかかる費用例】
・収入印紙代で40,000円
 ※電子定款を選ぶと不要
 
・定款の認証手数料30,000円
 ※資本金額によって変動します
 
・定款の謄本手数料約2,000円
 
・設立登記時の登録免許税として株式会社の場合は「資本金の額×0.7%」
 ※上記費用が150,000円未満の場合、最低でも15万円が必要
 
・印鑑証明書の取得費用
 
・登記事項証明書の取得費用
 
・司法書士などに依頼した際は報酬費用
 
法人を作るには20万円〜30万円は見積もっておくと良いでしょう。
合同会社を作る場合はその半分程度の費用を見積りましょう。
 

まとめ

今回は会社登記する必要性をはじめ、検討ポイントや登記申請の具体的手順を解説しました。
 
結論、会社登記には手間や費用がかかりますが、会社設立に登記は必須です。
 
また、個人事業主と異なり会社を設立すると、
・社会的な信用性が高まり
・資金の調達などがスムーズにでき
・節税対策にもつながる
といった事業展開するうえで大きなメリットも。
 
個人事業主やフリーランスとしての結果が大きくなるにつれて会社設立も検討してみてはいかがでしょうか。
 
 
 
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監修者  
 

税理士 篠塚啓三
税理士 篠塚啓三
1975年生まれ 埼玉県所沢市出身
早稲田大学商学部卒業
関東信越税理士会、所沢税理士会に所属
 
 
大学卒業後、一般企業を経て
 平成15年4月 シン中央会計 入社
 平成18年12月 税理士登録 登録番号106985
 平成29年11年 税理士法人シン中央会計 代表に就任

主に創業間もないスタートアップの顧客向けに、クラウド会計の導入やバックオフィスの合理化、経営数値の見える化や事業計画作成、金融機関からの資金調達など、幅広い支援を行っている。

 
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