創業初期は特に注意!役員貸付金はデメリット大
2022.04.15
役員報酬の設定って非常に難しいですよね。
時には低く設定し過ぎてしまって、急な出費に手持ちの現預金が耐えられない!…そんな場合があるかもしれません。
そんな時に、「少し会社からお金を借りよう」なんて思って思っている方はご注意!
後から大変な事になるかもしれません。
●役員貸付金とは
役員貸付金とは、法人から役員に対して貸し付けているお金のことを言います。
また、貸したつもりはなくても、下記のようなお取引も役員貸付金とみなされます。
*役員報酬以上の金額を引き出した(振り込みをした)
*個人的利用のために法人からお金を引き出した(振り込みをした)
*法人の財布のお金を個人的に使ってしまった
*法人の財布のお金を個人の財布に移してしまった
*個人事業時代の借入を法人に付け替えた(実際の金銭異動なし)
*個人事業時代の借入を個人のままにしたが、返済は法人資金から出した
(資金を出資金・資本金以外の形で法人に動かさなかった)
特に、法人の財布と個人の財布を一緒にしていると、このような事態が起きる可能性があります。
●役員貸付金の影響
基本的にメリットはほとんど無く、デメリットが非常に多いです。
【利息の発生】
法人は「営利組織」で、利益にならない活動はしない。
資金を貸したなら、利息を取る、という考えがあります。
そのため、役員貸付金に対しては法律に準拠した利息を計上する必要があります。
法人で計上した利息は収入となりますので、所得が出ていれば、法人税が課せられます。
【金融機関からの信用低下】
金融機関は「法人の事業」に融資を行います。
役員貸付金があると、「融資した資金が個人的利用に使われるんじゃないか?」と
疑いの目で見られてしまいます。
そのため、新規の融資に難色を示したり、既に融資した資金の返済を求められることもあります。
【税金の発生】
先に挙げた利息でも法人税が取られますが、税務調査で「役員賞与」と認められると、
更に納税が発生します。
役員賞与は通常経費になりませんが、元々役員貸付金も経費では無いので一見、
問題にならないように見えます。
しかし、賞与を支給した場合には「源泉所得税」を徴収しなくてはなりません。
その源泉所得税の納付漏れとして、源泉所得税額、それに係る延滞税が発生してしまうのです。
【利息の計上】
まずは貸付に対する利息を計上しましょう。
もちろん利息は出来る限り少なくしたいので、税法で定められた下限値にしましょう
*会社が他から借り入れて貸し付けた場合…その借入金の利率
*その他の場合…貸付を行った日の属する年に応じた次に掲げる利率(最近の率のみ記載)
・平成30年~令和2年中に貸付を行ったもの…1.6%
・令和3年中に貸付けを行ったもの…1.0%
※無利息又は低い利息で金銭を貸し付けた場合には、上記の利率により計算した利息の額と
実際に支払う利息の額との差額が、給与として課税されます。
(一部、課税されない条件もあります。)
【毎月の返済】
役員貸付金が発生してしまったら、過去に戻っては消せないので、これから返済をしていき、
残高0円を目指していきましょう。
返済は毎月が望ましいので、役員報酬として支払う金額の一部を返済に充てていきましょう。
給与明細に記載して、天引きしてしまう方法の方が手間が少ないでしょう。
また、返済のために役員報酬を増額すると、社会保険料や所得税が増加してしまう恐れがあるので、
注意してください。
●まとめ
役員貸付金は特に、法人の財布と個人の財布が分かれていない創業初期に発生しやすいです。
財布を一緒にしていると、知らず知らずのうちに、役員貸付金が出来ている…なんてこともあります。
できるだけ創業後すぐにお金の仕組みは整えて、防いでいきましょう。
そして、万が一、発生してしまった場合は出来るだけすぐに返済をして消していきましょう。
関連コラム:個人事業主が法人成りをしたときの注意点
関連コラム:法人の経費を個人で立替えた場合
関連コラム:役員報酬の決め方
※本サイトに掲載の内容は、令和4年3月現在の法令に基づき作成しております。