【全貌がわかる】株主総会ってなに?各種ポイントをわかりやすく解説
2023.07.20
・株主総会ってなに?
・株主総会はどうやって開催するの?どんなことを話するの?
・大きな組織じゃないし、株主総会はサッと適当に済ませたい
こんな悩みにお答えします。
株主総会についてのルールは会社法で定められていますが、法律の条文を読むのはハードルが高く、
ややこしく感じる方も多いでしょう。
とはいえ、株式会社にとって株主総会は切っても切り離せない重要な意思決定機関であり、
「開催しなくてもいいや」という考えは禁物です。
本記事では、
・株主総会の概要と具体的な開催手順
・株主総会での4つの決議内容と3つの決議方法
・経営者から寄せられるよくある質問
これらについて、会社法に定める内容をもとにわかりやすく説明します。
株主総会への理解を深め、健全な会社運営に活かし、株主からの信頼もがっちり獲得しましょう。
株主総会とは
株主総会とは重要事項を決める、会社にとっての最高意思決定機関であり、舵取りの役割を担います。
株式会社の所有者は株を所有する株主ですが、株主が経営したり働くわけではありません。
経営しない代わりに役員を株主総会で選任し、その役員により会社は運営されます。
株主と選任された役員(会社)の双方が発言できる機会が株主総会です。
株主総会は大きく分けて2種類ありますので、順番に解説します。
定時株主総会とは
通常は決算後3ヶ月以内に行われる一般的な株主総会のことを指します。
【招集時期】
・事業年度終了後に年1回
【議案内容】
・決算報告や承認
・事業報告
・役員報酬や剰余金の配当 など
年1回開催する会社が多数ですが、半年ごとに開催する会社もあります。
臨時株主総会とは
必要があればいつでも開催できる株主総会を指し、招集するかどうかは任意です。
【招集時期】
・必要に応じていつでも
【議案内容】
・定款変更
・補充取締役の選任
・新株予約権の発行 など
議案内容は緊急を要する内容ですが、法令での定めはありません。
株主総会と取締役会との違い
取締役会は出席者が取締役のみで、株主は出席しません。
取締役会は以下のような会社の業務に関する事項を意思決定をする場所だからです。
・株式譲渡についての決議
・経営方針の決定
・株主総会を開催するかの検討
ただし、取締役会を設置していない会社の場合、取締役会での決議事項は株主総会で決めます。
株主総会の具体的な開催方法
株主総会は書面のみで行えず、実開催しなければなりません。
株主総会を開催する流れをくわしく説明します。
株主総会の招集を決める
取締役会を設置する会社では、取締役会で招集を決定し、代表取締役が招集を行います。
取締役会での決定事項は次のとおり。
・株主総会の日時・場所
・株主総会で決議する議題
・提出する議案や書類
なお、取締役会を設置していない会社の場合は、取締役が招集します。
株主総会の招集を通知する
取締役会での決定事項にしたがって、以下の時期までに株主へ書面で招集通知を発送します。
【公開会社または書面投票制度・電子投票制度を採用する場合】
・株主総会をする日の2週間前まで
【非公開会社(取締役会を設置している会社の場合)】
・株主総会をする日の1週間前まで
【非公開会社(取締役会を設置していない会社の場合)】
・株主総会をする日の1週間前まで
※1週間を下回る期間での定めがある場合は、その期間まで
たとえば、2週間前までとは中14日を空けることを意味しますので、開催日の25日前までには
通知を出します。
また、下記の場合は書面による通知の必要はありません。
・公開会社ではない
・取締役会を設置していない
・書面投票・電子投票を採用しない
株主の承諾があればメール通知もできますが、後々のトラブルを防止するため、事前の同意やメール
送付先を書面やメールにて確認しておきましょう。
議題・議案などを提出する
株主への招集通知には、
・日時・場所
・議題
・提出する議案
を記載し、必要書類とともに送付します。
なお、法令により2023年3月以降の株主総会から、すべての上場会社は電子提供制度の導入が
義務付けられました。
電子提供制度とは株主総会の資料をウェブサイトに掲載し、そのURLなどを株主へ通知して閲覧できるようにする制度で、株主総会の3週間前までに掲載しなければなりません。
株主総会の準備【前日まで】
運営方針の策定
どのような株主総会にするのかを決めます。
たとえば、
・とにかくきちんと株主総会を運営する
・総会に出席する株主の満足度を高める
・メディアを通じて世間に認知されるようなインパクトを狙う
など、事前にどのような会合にするかを策定します。
1年に1度の経営陣と株主が一斉に会す場なので、綿密に打ち合わせを行います。
各種書面や会場の準備
想定問答集を作っておくと効果的です。
株主からの質問に先回できれば、スムーズな進行につながるからです。
スッと適切な回答ができると株主の信頼にもつながるでしょう。
また、付議する議案に漏れがないかのチェックは必須。
会場を借りる場合は、事前に予約して当日の運営スケジュールも決めます。
株主総会ですること【当日】
各種報告事項の報告
決議の必要がない事項について報告をします。
例えば、
・監査結果の報告
・前年度の事業報告
・計算書類(貸借対照表、損益計算書 など)
などを説明します。
議案の審議・決議
次に、招集通知にて伝えた議案について審議・決議します。
議案の内容を株主にわかりやすく説明することが求められます。
審議の方法は以下の2つです。
【一般審議方式】
・挙げられたすべての議案を一括で審議し、その後に決議案を順番に決める方法
・円滑に進められるメリットがある主流な方法
【個別審議方式】
・議案ごとに提出し、審議・採決する方法
・慎重な審議を要する場合に採られるケースが多い
なお、後述しますが決議方法は3種類あります。
株主総会の後にすること
計算書類の公告
遅滞なく承認を受けた計算書類を公告します。
中小企業は貸借対照表のみ、大きい会社は貸借対照表と損益計算書が対象です。
議事録の作成・保存
会社法に基づき議事録は本店に10年間、支店に5年間保存する必要があり、デジタル形式での保存もできます。
株主と会社債権者は議事録の閲覧・謄写の請求ができますので、議事録はわかりやすく正確に作成して保存しましょう。
近年はバーチャル型の株主総会の検討が進んでいる
バーチャル型の株主総会は2種類あり、近年は増えつつあります。
バーチャルで開催するには、定款変更で『当会社は株主総会を場所の定めのない株主総会とすることができる』など、文言を追加する必要があります。
では、リアル株主総会との違いを解説します。
ハイブリッド型バーチャル株主総会
リアル株式総会を開催しつつ、インターネットなどを通じて開催する方法で、参加型と出席型に分けられます。
【参加型】
・会社法上の『出席』を伴わず、議決権を行使できない
・リアル株主総会の場所にいない株主が審議などを確認・視聴できる
・チャットなどで質問できる場合もある
【出席型】
・会社法上の『出席』を伴い、議決権を行使できる
・株主はリアル株主総会の場所にいなくても議決権の行使や質問ができる
バーチャルオンリー株主総会
インターネットなどのバーチャル上のみで開催し、株主は会社法上の『出席』を伴って参加できる株主総会です。
開催するには4つの要件があります。
・上場会社である
・省令要件を充足し、経産・法務大臣の確認を受ける
・「場所の定めのない株主総会」を開催できる旨を定款に定める
・招集を決定したときに省令要件を満たしている
4点目の省令要件とは、
・通信法に関する事務責任者の設置
・通信障害などに関する対策方針の決定
・インターネットの使用に支障がある株主の利益確保への配慮
・株主名簿に記載・登録されている株主が100人以上
であり、感染防止対策などを目的としていません。
今後はバーチャルオンリーで開催する会社も増えることが予想されます。
株主総会で決議事項は大きく分けて主に4つ
・会社の組織・事業について
・株主の権利について
・役員等の人事について
・役員報酬について
主要な決議事項である上記4つを解説します。
会社の組織・事業について
会社の基本的な方針を決めます。
・定款変更
・事業譲渡
・組織変更・再編
・解散
など、これらは会社の将来を左右しかねない重要な決定事項です。
役員の独断に任せると、将来的に株主が大きな損害を被りかねないことから、会社法により株主総会での決議として定めらています。
株主の権利について
下記のような、株主の利害に影響があることを決めます。
・株式の併合
・会社による自己株式の取得
・計算書類の承認
・資本金の減少
・剰余金の分配
中小企業によっては、株式の譲渡を自由にすると第三者に会社を乗っ取られる可能性がありますので、そういう事態を防ぐために譲渡制限株式を発行し、会社が望まない人物に株式を持たせないようにできます。
譲渡制限株式の譲渡承認は原則として株主総会で決議しますが、取締役会を設置する会社では取締役会で決定します。
役員等の人事について
役員(取締役・監査役・会計参与)や会計監査人の選任・解任は株主総会で決議します。
会社の所有者は株主ですので、役員などの人事に対する決定権は株主にあります。
役員報酬について
役員報酬は定款に定めがない限り、株主総会で決議します。
取締役会での役員報酬の決定は、役員による不当な設定の恐れがあるからです。
株主総会での決定により、株主や会社にとっての利益を守る役割があるといえます。
なお、役員報酬は総額を定めれば足ります。
株主総会の決議方法は3種類
株主総会での決議方法は次の3つです。
・普通決議
・特別決議
・特殊決議
決議の成立には出席要件にあたる『定足数』と、決議要件にあたる『議決権数』を満たす必要があり、「普通決議<特別決議<特殊決議」の順で成立要件が厳しくなります。
決める内容の重要度が高くなり、株主や会社への影響度も大きくなるからです。
株主は1株につき1議決権が与えられ、決議は多数決ですので、株式を多く所有する株主ほど影響力が高くなります。
普通決議
株主総会において最も一般的な決議方法です。
主な決議内容は以下のとおりです。
・役員の選任・解任
・役員報酬
・剰余金の配当・減少・処分
・自己株式取得
・資本金額の増減(減少は分配できる金額よりも少なくなる場合)
・準備金額の増減
・競業・利益相反取引などの承認
【定足数】
・出席する株主が保有する議決権の過半数が必要(定款による変更可)
【議決権数】
・出席した株主の議決権の過半数が賛成票である必要(定款による変更不可)
具体的には、まず株主総会を成立させるには定足数を満たす必要があります。
1株=1議決権とし、A:15株 B:50株 C:30株 D:5株という状況であれば、定足数を満たすには51株位以上が必要ですので、AとCの出席だと成立しません。
次に、決議要件は出席した株主の過半数を満たすことですので、Bと誰かが賛成すれば可決されますが、Bが反対すれば議案は否決されます。
特別決議
会社の根幹にかかわる重要事項を決議する方法です。
主な決議内容は以下のとおりです。
・譲渡制限株式の買取り
・株式の併合
・特定株主からの自己株式取得
・資本金額の減少(減資)
・定款の変更
・事業譲渡
・合併、組織変更、組織再編
【定足数】
・普通議決と同じ(定款によって1/3以上の割合を定められる)
【議決権数】
・出席した株主の議決権の2/3以上(定款によって2/3以上の割合を定められる)
特殊決議
極めて特殊な事項を決議する方法です。
主な決議内容は以下のとおりです。
・株式の全部を譲渡制限株式とする定款の変更
・公開会社を消滅会社として、新設合併契約等の承認
【定足数】
・なし
【議決権数】
・議決権を行使できる株主の半数以上(定款による緩和はできない)
かつ
・当該株主の議決権の2/3以上(定款によって2/3以上の割合を定められる)
なお、株式の全部に譲渡制限をかけている非公開会社が、
・剰余金の配当を受ける権利
・残余財産の分配を受ける権利
・株主総会における議決権
などを株主ごとに異なる扱いをする場合は、最も重大な決定事項ですので、議決権数の要件が下記のようにさらに厳しくなります。
【議決権数】
・議決権を行使できる株主の半数以上(定款による緩和はできない)
かつ
・当該株主の議決権の3/4以上(定款によって3/4以上の割合を定められる)
株主総会にまつわるQ&A
では、最後によくある質問について回答します。
株主総会って開かないとダメ?
「家族経営だし株主総会の必要はないでしょ?」という声もありますが、たとえ持株100%の場合やワンマン経営だとしても、きちんと開催しましょう。
将来的なリスクが高いからです。
たとえば、省略した株主総会で決議した役員報酬が不当に高いという理由で取り消しの訴えを起こされる可能性も。
決議した内容が無効になりかねないので、会社法に沿ってきちんと株主総会を開催しましょう。
決議に対する定足数や議決権数などの要件に違反したらどうなるの?
会社法の取り決めに反するので、決議は無効になります。
株主提案ってなに?
株主から株主総会の議案を請求できる権利を株主提案といいます。
株主提案をするには、以下の条件を6ヶ月前から満たす株主に限られます。
・総株主の議決権の1%以上の議決権を有する
または
・300個以上の議決権を有する
また、複数の株主の議決権を合わせて要件を満たせれば、共同で提案できます。
「役員の〇〇が違法行為をしている」など、株主提案するときは審議を必要とする理由を明らかにする必要があります。
株主提案に対して会社側は拒否できませんので、会社側が応じない場合は裁判所の許可のもと開催できます。
まとめ
今回は株主総会に関するさまざまなポイントをご紹介しました。
内容をまとめると、
・株主総会とは会社にとっての最高意思決定機関であり、定時と臨時の2種類がある
・リアルやバーチャルで株主総会を実施できるが、いずれも入念な準備が求められる
・株主総会では事業・権利・人事・報酬など、会社や株主にとっての重要事項を決める
・決議事項の重要度が高まるにつれて成立要件は高まる(普通決議<特別決議<特殊決議)
・株主総会は会社法にしたがって適切に開催しないと決議内容は無効になりかねない
会社法に基づいた開催が求められる株主総会。
多くの利害や影響が交錯する重要な会合だからこそ、開催を検討するときは専門家に意見を求めるのも賢明でしょう。
会社としてコンプライアンスを遵守しつつ、法律に基づいた適切な株主総会の運営を心がけ、株主との健全な関係を築きましょう。
関連コラム:法人の1年間のスケジュール
関連コラム:【税理士が監修】会社で扱う書類の保存期間まとめ【文書管理に強くなる】
監修者
税理士 篠塚啓三
1975年生まれ 埼玉県所沢市出身
早稲田大学商学部卒業
関東信越税理士会、所沢税理士会に所属大学卒業後、一般企業を経て
平成15年4月 シン中央会計 入社
平成18年12月 税理士登録 登録番号106985
平成29年11年 税理士法人シン中央会計 代表に就任主に創業間もないスタートアップの顧客向けに、クラウド会計の導入やバックオフィスの合理化、経営数値の見える化や事業計画作成、金融機関からの資金調達など、幅広い支援を行っている。
※本サイトに掲載の内容は、令和5年7月現在の法令に基づき作成しております。