社宅の取り扱いについて
2022.03.11
中小企業の経営者やひとり社長の節税方法の一つに、「社宅」を使う方法があります。
法人名義で社長や従業員の住宅を借りて、法人がその家賃を負担するという方法です。
社宅の仕組みや注意点を記載していきます。
●社宅が節税になるしくみ
本来、住宅の家賃は、入居する個人が負担すべきです。
社宅であろうと、社長・従業員の家賃を会社が全額肩代わりすれば、法人から社長・従業員に対し
「現物給与」が支払われたものとみなして、社長・従業員個人に給与課税されます。
しかし、この時、法人が社長・従業員から「賃料相当額(※1)」を受け取っていれば、
現物給与による給与課税はありません。
つまり、住居を法人が賃貸借契約して、家賃を支払い、賃料相当額を役員(従業員)から
徴収する、ということです。
会計処理では、法人が支払う家賃は経費になり、徴収する賃料相当額は収入となります。
そのため、家賃と賃料相当額との差額分が法人の経費に出来るわけです。
※1.賃料相当額とは
…一定額の家賃を受け取っていれば給与として課税されない、その金額を言います。
具体的な計算方法は後述いたします
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2600.htm
もちろん経費にはなりますが、法人においては「家賃-賃料相当額」の支出が
増えてしまいますので、その分の役員報酬(給与手当)の減額を
同時に行うことで、法人からの支払額を変わらずに保つことが出来ます。
役員報酬(給与手当)を減額することにより、所得税の金額も減少しますので、
役員(従業員)の手取りも増加します。
また、役員報酬(給与手当)の金額が社会保険料の上限額に達していなければ、
役員報酬(給与手当)を減額することによって、社会保険料の金額も減少するため、
法人支出も更に減ることになります。
●賃料相当額の計算方法
賃料相当額を計算するにあたって、その社宅が「小規模な住宅」にあたるかどうかによって、
計算方法が異なるため、判定を行います。
また、入居するのが会社の役員である場合と、従業員である場合でも計算方法に
違いがあるのですが、今回は、「社宅を借りて、役員へ貸与した」場合の計算例を解説します。
【小規模な住宅の賃料相当額】
*小規模な住宅の定義
法定耐用年数が30年以下の建物の場合 →床面積が132㎡以下である住宅
(主に木造住宅(22年)が該当します)
法定耐用年数が30年を超える建物の場合 →床面積が99㎡以下である住宅
(主に鉄骨鉄筋コンクリート造り・鉄筋コンクリート造りの住宅(47年)が該当します)
※床面積については、アパートやマンションなどの共同住宅の場合、
借り上げた専有部分だけでなく、共有部分の床面積についても、
専有部分の床面積に応じて加算します。
*賃料相当額
次の①~③の合計額が、賃料相当額になります。
・①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
・②12円×(その建物の総床面積(㎡)/(3.3㎡))
・③(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
*固定資産税の課税標準額の調べ方
住宅の借り主であれば、その住宅の「固定資産税の課税標準額が記載されている書類(※2)」を、
物件の所在地の市区町村(または都道府県税事務所)で取得することが可能です。
以前まではオーナーしか明細書の取得はできませんでしたが、現在は借り主であれば
取得できるようになりました。
※2.市区町村(または都道府県税事務所)によって評価証明書や課税台帳など名称が異なります
【小規模でない住宅の賃料相当額】
会社で賃貸した住宅の場合、次のいずれか多い額が賃料相当額になります。
・会社が家主に支払う家賃の50%
・次の数式の金額
(その年度の建物の固定資産税の課税標準額×12%(※3)
+その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×6%) ÷12
※3.法定耐用年数が30年を超える建物の場合には12%ではなく、10%をかけます
●役員社宅で節税する際の注意点
【会社で契約をする】
社宅として税務上の取り扱いをするには、必ず会社名義で賃貸借契約などを
取り交わすことが必要になります。
【賃料相当額を徴収しなければ現物給与に】
役員から1円も徴収していない場合、賃料相当額の給与課税が行われます。
賃料相当額より低い金額しか徴収していなければ、受け取っている家賃との差額が課税対象になります。
【床面積が240㎡を超える場合】
床面積が240㎡を超える社宅のうち、たとえばプール付きの社宅、役員個人の嗜好を
著しく反映した社宅などは、豪華な社宅として扱われ、賃料相当額は会社が支払う家賃と
同額となります。つまり、節税になりません。
●まとめ
お住まいが賃貸の方については、社宅制度は非常に効果的です。
管理会社に法人契約への切替が出来るかご確認いただき、お手続きを進めてください。
但し、賃料相当額を徴収していないと給与課税されてしまいます。
税務調査等で指摘されると、節税どころか増税になりかねません。
賃料相当額をしっかりと判定することが非常に重要になります。
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