個人事業主が法人成りをしたときの注意点
2022.01.05
個人事業主が法人成りした場合の注意点をまとめました。
意外と知られていないこともあるので、ぜひ下記をご覧ください。
①資本金の振り替えを忘れない
法人の口座が開設されたら、発起人の預金口座に入れてある資本金相当額を法人の
口座に移行して下さい。
仮に、移行しないで発起人(一般的な中小零細企業であれば社長)の個人口座に
資本金が入ったままの状態だと、場合によっては貸付金扱いとなり、
銀行からの資金調達に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 資産の移行や名義変更を忘れない
法人を設立したあと、個人事業に関わるすべての資産の移行が必要となります。
移行の方法としては「売買」、「現物出資」、「リース」などの方法があります。
それぞれの事業内容によってメリットやデメリットが異なってくるので、
自社にとってどの方法を選択したら良いのか、ぜひお気軽にご相談ください。
また個人名義の契約関係を法人名義に変更する必要があります。
手続上、どうしても法人契約に変更できない契約がある場合には、役員個人が立て替えた形で
経費処理を行います。
③ 廃業届の提出を忘れない
法人を設立したら、個人事業の廃業手続きを行います。
一般的には所轄の税務署に以下のものを届出することになります。
・個人事業の廃業等届出書
・青色申告の取りやめ届出書(青色申告で確定申告をしていた場合)
・事業廃止届出書(消費税を支払っていた場合)
・給与支払事務所等の廃止の届出書(社員を雇って給与を支給していた場合)
また、都道府県税事務所へ「事業廃止等申告書」をあわせて提出します。
④ 最後の確定申告を忘れない
個人事業を廃業する際、廃業届など書類を提出するだけで安心していてはいけません。
廃業時点までの、個人事業主としての確定申告をする必要がありますので、
次の申告期限までに忘れずに確定申告をしましょう。
また、この確定申告では、個人で保有していた資産の、法人への移行に伴う譲渡所得なども
計上することになるので注意が必要です。
消費税の課税事業者である場合には、譲渡による消費税の計算も計上することになります。
⑤ 廃業後の事業税の支払い
通常は個人事業税の通知が来た年度に租税公課として経費に計上することになりますが、
個人事業を廃業した年の翌年度の8月頃に個人事業税の通知が来ても、既に廃業してしまっているので個人事業の経費にすることができません。
そこで、例外的に「個人事業税の見込控除」の計上が認められており、
個人事業税を見込みで個人事業廃業年度の経費として計上することができます。
個人事業税の見込控除の計算は以下の通りです。
見込控除額=(A±B)×C÷(1+C)
A:事業税の課税見込額を控除する前の廃業年分の事業所得の金額
B:事業税の課税標準の計算上Aに加算し又は減算する金額
加算する金額・・・青色申告特別控除額(65万円又は55万円又は10万円)
減算する金額・・・事業主控除額290万円(月数按分)
C:事業税の税率3~5%(業種により決定)
【まとめ】
①資本金を法人口座へ入金
②資産の異動、名義変更
③廃業届等の提出
④法人営業までの個人分の確定申告
⑤事業税の見込控除にて経費を追加計上
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